近年、キャンプや車中泊などのアウトドアレジャーの普及、そして防災意識の高まりから、ポータブル電源とソーラーパネルの需要が増えています。
「太陽光で発電した電気を蓄えて、好きな場所で使える」という利便性は魅力的ですが、導入にはある程度の初期費用がかかります。
そこで気になるのが、「ポータブル電源とソーラーパネルを日常的に使って、電気代を節約し、購入費用を回収することは可能なのか?」という点でしょう。
Contents
試算例:Jackery製品で元を取るには何年かかる?
今回は、人気の高いJackery製品を例に、費用回収期間を計算してみましょう。
【導入製品と費用】
元を取る期間を短くするためにセール価格での購入を狙っていきます。
Jackeryでは定期的にセールを行っているので購入するときはセール時を狙いましょう。アマゾンでもセールしていることがあり、価格が割り引かれていなくても高額なポイントが付くこともあります。
- ソーラーパネル: Jackery SolarSaga 100W
- 価格:24,360円(セール価格)
- 保証期間:5年
- ポータブル電源: Jackery ポータブル電源 600 Plus
- 価格:60,200円(セール価格)
- 保証期間:5年
- 合計初期費用: 24,360円 + 60,200円 = 84,560円
発電量と節約額の計算
元を取れるかどうかは、「どれだけ発電し、その電気をどれだけ日常的に使って電気代を節約できるか」にかかっています。
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想定される発電量
- ソーラーパネルの定格出力は100Wですが、これはあくまで理想的な条件下での最大値です。天候、季節、設置角度、日照時間などによって実際の発電量は大きく変動します。
- 日本の年間平均日照時間を考慮し、パネルの性能やロス(変換効率、充放電ロスなど)を見込んで、1日あたりに平均して約0.3kWhの電力をポータブル電源に蓄えられると仮定します。(これはかなり好条件な推定です。実際にはこれより少なくなる可能性が高いです。)
- 年間発電量(推定):0.3 kWh/日 × 365日 = 約109.5 kWh/年
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節約できる電気代
- 家庭用電気料金は、契約プランや使用量によって異なりますが、ここでは1kWhあたり31円として計算します(電力会社やプラン、再エネ賦課金などにより変動します)。
- 年間節約額(推定):109.5 kWh/年 × 31円/kWh = 約3,394.5円/年
費用回収期間の計算(回収には約25年かかる)
回収期間 = 初期費用 ÷ 年間節約額
84,560円 ÷ 3,394.5円/年 ≒ 約24.9年
試算結果の考察
上記の試算では、購入費用を回収するまでに約25年かかる計算になりました。
これは、あくまで「毎日欠かさず発電し、発電した電気をすべて家庭で消費して電気代を節約できた」という理想的な条件下での計算です。
Jackery製品の保証期間は5年です。
バッテリーは消耗品であり、経年劣化により蓄電容量は徐々に減少します。
25年という期間中、同じ性能を維持できるわけではなく、途中でバッテリー交換や買い替えが必要になる可能性が高いことを考慮すると、純粋な電気代の節約だけで購入費用を回収するのは、この試算条件下では現実的ではないと言えるでしょう。
費用回収期間を短くする方法はあるか?
試算結果は厳しいものでしたが、工夫次第で「元を取る」という考え方に近づける、あるいは金銭的メリット以外の価値を見出すことは可能です。
発電量を最大化する
ソーラーパネルは、できるだけ長時間、直射日光が当たる場所に設置します。南向きで、周囲に影を作る建物や樹木がない場所が理想です。
季節によって太陽の高さが変わるため、可能であればパネルの角度を調整すると発電効率が上がります。
発電した電気の活用度を高める
スマートフォンやタブレットの充電、ノートパソコンの使用、LED照明、小型扇風機など、消費電力の少ない電化製品の電力を積極的にポータブル電源でまかないます。
電力使用量が多い時間帯(ピーク時)の電力会社からの買電を減らすために、ポータブル電源の電気を使う「ピークカット」や、電力料金が安い夜間に充電し(※ソーラー充電ではない)、昼間に使う「ピークシフト」も考えられますが、今回のソーラー充電メインのシナリオとは少し異なります。
より大きなシステムを導入(初期費用は増加)
より大きな容量のポータブル電源と、より多くのソーラーパネルを導入すれば、発電量と蓄電量が増え、節約できる電気代も増えます。
ただし、当然ながら初期費用も大幅に増加するため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
「節約」以外の価値を重視する(超重要!!)
- 停電時でも電気が使える
- アウトドアでも電気が使える
- 環境に優しい
といったメリットがあります!
停電時でも最低限の電力を確保できる安心感は、金銭には代えがたい価値があります。情報収集のためのスマホ充電や、夜間の照明、小型冷蔵庫による食料保存などに役立ちます。
キャンプや車中泊で、電源のない場所でも快適に過ごせるようになります。これも電気代節約とは別の大きなメリットです。
再生可能エネルギーである太陽光を利用することは、CO2排出量削減に貢献します。
ポータブル電源・ソーラーパネル導入のデメリット
メリットばかりではありません。導入前に知っておくべきデメリットも存在します。
天候への依存
太陽光発電の最大の弱点は、天候に左右されることです。
曇りや雨の日は発電量が大幅に低下し、夜間はもちろん発電できません。
梅雨時期や冬場など、日照時間が短い季節は、期待するほどの発電量が得られない可能性があります。
発電量・供給電力の限界
今回例に挙げた100Wのソーラーパネルと600Whクラスのポータブル電源では、家庭の電力すべてをまかなうことはできません。
使える電化製品も、ポータブル電源の定格出力(Jackery 600 Plusなら600W、X-Boost機能で一時的に最大1200W)までに限られます。
初期費用
前述の通り、導入にはまとまった費用がかかります。
セールなどを利用しても、数万円から十数万円の出費となります。
設置スペース
ソーラーパネルを広げて設置するには、ある程度のスペースが必要です。
特にアパートやマンションのベランダなどでは、設置場所が限られたり、規約で設置が難しかったりする場合があります。
バッテリーの寿命と劣化
ポータブル電源に使われているリチウムイオンバッテリーは、充放電を繰り返すことで徐々に劣化し、蓄電できる容量が減っていきます。
製品寿命があり、いずれは買い替えが必要になります。保証期間はあくまでも目安であり、使用状況によって劣化の進度は異なります。
最近のポータブル電源はリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用しているため、2,000回~4,000回は使用できます。
Jackeryの最近のモデルでも「4000回使用後も工場出荷時の70%を電池残量を維持」と紹介されています。
毎日使っても10年は使えるのですが、今回の試算では回収に25年かかることに注意が必要ですね。
まとめ:元を取ることを主目的にすべきか?
Jackeryのポータブル電源600 Plusと100Wソーラーパネルの組み合わせで、純粋な電気代節約だけで購入費用(約8.5万円)を回収するには、非常に好条件な試算でも約25年かかる計算となり、現実的とは言えません。
しかし、ポータブル電源とソーラーパネルの価値は、電気代の節約だけではありません。
- 災害への備え
- アウトドア活動の質の向上
- 電源のない場所での利便性
- 環境への配慮
これらの付加価値を考慮すれば、初期費用を払う価値は十分にあると考えることができます。
結論として、「電気代の節約だけで元を取る」ことを主目的としてポータブル電源とソーラーパネルを購入することは推奨しにくいですが、防災対策や趣味への活用といった「利便性」や「安心感」を重視するのであれば、非常に有用な投資と言えるでしょう。
導入を検討する際は、ご自身のライフスタイルや主な使用目的、そして予算を考慮し、金銭的な損得勘定だけでなく、総合的な価値で判断することをおすすめします。